香港 最後之夜
さて、香港にはすっかり嫌気がさしてしまった。
頑張って楽しみを探すも、何かと精神的疲労の募る街であります。
もはや一周して憎めなくなってきた。
香港に降り立ったその時は、
この圧倒的な大都会に目を輝かせ、胸をときめかせ、はやる気持ちを抑えながらネイザンロードを1時間歩いた。
ダンジョンのような雑居ビルの中をさまよってゲストハウスを探し、
夜のネオン街をすり抜けて面白いものを探したあの日。
そんな楽しい香港はたった1日で終了。
3日間、日本から飛んできた友達と遊んだ期間を除けば、
実に寂しい、苦しい、切ない思い出。
こんなにも1つの街を嫌いになったことは、いまだかつて無かった。
口に合うものがない。
これが人の心にどんなに大きな影響を与えるか。痛いほどよくわかった。
美味しくなければ、楽しくないのだ。
自分とて、なんの努力もせずふらつき回っていたわけではない。
ネットで日本人の評判の店を探して探して探した。
でも結局、心が動くほど美味しい食べ物は先日のワンタンくらいだ。
自棄になって諦めてマクドナルドへ逃げたこともある。
(ちなみに月見バーガーセットが安かった)
マカオに行くこともできた。
しかし気力が湧かなかった。
何をしても面白くなくなっていた。
そんなこんなで最後の夜。
風の噂で「香蓮樓」という老舗レストランが美味いらしいと知る。
調べてみると、海を渡った香港島の方にあるようだ。
海を渡ると言っても電車に乗ればなんてことない。
本当はスターフェリーで行きたかったが、あいにくの雨で足場も悪く、歩きたくなかったので大人しく電車に乗る。
あまりガヤガヤしていない、少し暗めの道を通りながら店を探すと何やら素敵な灯りが見えてきた。
ここです。
この千と千尋感、良いじゃない。
さっそく入店。
21時ごろだったのであまり人も多くない。
残念ながら飲茶は16時までだったので、適当にナスとひき肉の料理を頼む。
それから龍井茶も。
店内、結構広め。
アンティークな感じがとても良い雰囲気を出している。
店員(香港ジイさん)多め。
白米はいるのか?と聞かれたが広東語は聞き取れず、困っていると他の店員がライスライスと助け舟を出してくれる。
そしてやってきたお料理!
店員たちが、熱いから気をつけなさいよ。と何度も言ってくる。
久々にやさしい言葉をかけられて思わず感きわまる。
実はナスが食べたくて頼んだわけではない。
(最初に頼んだ豆腐が売り切れたので代替品)
でもいいよ、食べるよ。ありがとう…
流石に評判のいい店なだけあって美味い。
ご飯に乗せて食べた。
ハートが暖かい。
それから、レジのおばさんのTシャツに、わんぱく相撲全国大会という文字が書かれていた。
さすがに写真は撮っていない。
明日の朝、空港へ行く前にここで飲茶をしようと決めてその日は終わった。