香港の夜
そんなこんなで、香港へ来てから6日が経とうとしています…。
なぜ香港への滞在をこんなにも長いものにしてしまったのか。
最後まで対抗したかった。
旅はいつか終わるという現実に…。
主要な観光地はいくつか行ったし、これと言ってやりたいことがあるわけでもない。
ただ適当に時間を潰すだけの日々を果たして旅と呼べるのだろうか。
でも、自分のホーム以外で、なんてことない擬似日常をダラダラ過ごすのも悪くないのは確か。
慌ただしく観光するのが好きじゃない。
有名どころをひたすら回るよりも、適当に見つけて気に入った所へ通いつめたい。
フィーリングを頼りに、適当に生きていたい…。
そんな夢をしっかり叶えられた一ヶ月だったと思う。
まあ帰国まで残り数日となったわけだし、引き続き気張らずに過ごそうと思い、
香港の映画好きが集まるという映画館へ出かけてみた。
映画館隣接のカフェは書籍や雑貨も販売している。
映画館自体はこじんまりとしていて、2つか3つ?しかスクリーンがないみたい。
でも照明やポスターがお洒落で気に入った。
映画の上映スケジュールが紙で張り出されているのも素敵だ。
この日はたまたま日本の「万引き家族」が上映されていたので、早速窓口でチケットを購入。
実は日本でまだ見ていなかったのでちょっとラッキー。
中国語名は小偷家族。
意味はほとんど同じかな。万引きと泥棒はちょっと意味が違うかも知らないけど。
念のためスタッフに音声は日本語か?と聞いてみると、音声は日本語で字幕は中国語と英語だという。
字幕が2つもあるなんて面白いね。
さらにラッキーなことに学割が効いた!
もちろん日本の大学の学生証で。
学割で65💲(970円ほど)!これは嬉しい。
スタッフも優しくて感じが良かった。
あまり時間もなかったのでポップコーンなどは買わずにそのままシアタールームへ。
椅子が大きくて座り心地抜群。
隣の中国人(大陸)カップルがにおいのきつい食べ物をクチャクチャ言わせながら食べていたので不快だったが。
ところで中国人は映画中に声をあげるので、隣が中国人だと分かったときちょっと嫌だった。
声をあげると言っても、うわァ。だの アハハだの自然な反応だけど、自分はそういうのを我慢できないタイプなのだ。
映画が始まって早々、早速なにか囁きあっているカップル。
頼むから、喋らないで!?
あまりに喋り続けるようなら、注意しよう…と思っているうちに映画に見入ってしまっていた。
おそらく中国人もそうだったと思う。
最初から最後までずっと涙をぬぐいながら鼻をすすっていた自分の方が迷惑だったかもしれない。
余裕があれば日本語のセリフを聴きながら英語、中国語の字幕をチェックしていたが
やはり日本語ネイティヴだからこそ感じるものもあるよなぁ、としみじみ。
映画の内容も凄くて心を掴まれたが、なにより日本のリアルな街の風景に思わず揺さぶられた(※一ヶ月しか離れていない)
やっぱり自分のホームは日本なんだな、と。
映画の後、余韻に浸りながら外へ出ると
生ぬるい外の空気と雑居ビルの灯りに急に物語を感じ始めた。
いけすかないと思っていた香港の街にいよいよ愛着が湧いてきたようだ。
適当に目に入った料理屋をのぞいてみる。
店のおじいさんが優しく中へ迎え入れてくれた。これは当たりかもしれない。
期待を抑えつつ、中身がエビではないワンタンをオーダー。
やってきたワンタンスープ。
ワンタンは中国東北のようにぎっしり詰まっているわけではなくどちらかというと日本のものに似ている。
そして一口。
美味い。
香港に来て初めて本気で美味いと感じた。
おじいさん。優しい笑みを浮かべている。
これは凄いよ。
ありがとう。
もし香港へ行って、口に合うものがないと感じたら是非ここのワンタンを食べてみてください。